これは面白い!漫画「応天の門」の時代背景や実在人物の考察まとめ

応天の門

画像出典:コミックバンチweb

平安時代という時代について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

古典の教科書では「源氏物語」や「枕草子」などを勉強しますよね。

女流文学が花開き、宮廷の華やかな世界が描かれる作品が登場しました。

そして日本史の授業で「平安時代」について語られるのは、藤原家が摂関政治により栄華をきわめたこと。

そして、それに伴う様々な陰謀についてのエピソードです。

華やかな世界の裏側にドロドロとした愛憎劇の空気を感じ、興味を惹かれた方も多いかもしれませんね。

「応天の門」は、そんな平安時代を舞台とした物語です。

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「応天の門」ってどんな物語?漫画のあらすじや時代背景を紹介!

「応天の門」は、灰原薬による漫画作品。

月刊コミック@バンチで連載中、現在9巻までが発売中です。

藤原氏が力を持ち始めた平安時代。

主人公として描かれるのは菅原道真、そして在原業平の2人です。

ある日、「女官が失踪する」という謎めいた事件が京で起こり、「鬼のしわざではないか」と囁く者も多い中、在原業平はひょんなことから出会った菅原道真の博識を見出し、半ば強引に事件に巻き込んでいくのです。

嫌々ながらも道真はその事件の謎を解きます。

そしてこの事件が鬼のしわざなどではなく、「人間の業」によるものだということも。

これをきっかけに業平は、京で起こった様々な事件を道真のもとに持ち込むようになります。

歴史上の偉人である2人を探偵役に配し、京の都に起こる様々な事件を描き出すこの作品。

人の業の深さ、平安時代の闇、いろいろなものを味わえる作品です。

 

「応天の門」の登場人物は?実在の人物やエピソードも!

平安時代を舞台としたこの作品、実在の人物も数多く登場します。

どんな人物が活躍するのでしょうか?メインキャラクターをご紹介します。

 

①菅原道真

菅原道真(すがわらの・みちざね)という人物の名前を聞いたことがある方は多いと思います。

受験生の時、天満宮のお守りを買いに行った方もいらっしゃるかもしれません。

天満宮は道真が祀られている神社。

どうして受験生がそのご利益を求めるのかというと、理由はほかでもない、彼が「学問の神様」だからです。

天神様とも呼ばれ、学問に長けた人。それが菅原道真でした。

今作では、文章生(もんじょうしょう・歴史や詩文を学ぶ学生)であった頃の若き彼が主人公。

性格は非常に冷静で、少し無愛想なところもありますが、民を無下に扱う貴族への苛立ちを隠さないなど、根は非常に優しい性格。

小さなヒントから真実を導き出す観察力に長けています。

さて、菅原道真といえば「怨霊」…そんな言葉を連想される方もいるかもしれません。

彼は成長し、右大臣という政治の中心的地位に昇進しますが、あまり良い顔をしない貴族も多かったようです。

もともと学者の家の生まれである道真の昇進を妬んだ左大臣の藤原時平に陥れられ、太宰府(九州)へ左遷されることとなりました。

その後、陥れた当人である時平の死をはじめ、藤原の家に様々な災厄が降りかかりました。

その顛末は道真の祟りと恐れられたといいます。

ちなみに今作でバディを組む在原業平とは、実際も親しい間柄であったとか。

 

②在原業平

平安時代の風流人といえば、在原業平(ありわらの・なりひら)です。

「昔、男ありけり…」と始まる「伊勢物語」。

美しい和歌と、とある男の様々な恋物語が綴られた古典の名作ですが、この「男」こそ業平であるとされています。

通っていた女の家から帰る夜道で出会った道真の洞察力に感心し、事件の解決に力を借りたことから、その後何度も不思議な事件を道真のもとに持ち込むようになります。

迷惑がりながらもつきあってしまう道真。業平にはどこか「人たらし」的な魅力があります。

和歌の名手で、見目もよく、男性としての魅力にあふれた彼はとにかくモテます。

様々な女性と浮き名を流していますが、かつて恋をした藤原高子は彼にとって特別な存在。未だに忘れられずにいます。

さて、在原業平は、もともと天皇の孫という非常に高貴な生まれの人物です。

京で様々な役職を歴任し、天皇の信頼を得ました。史実でも美男として有名。

「略無才学、善作倭歌」(学力はあまりないが、和歌がうまい)という記録もあります。

自分の力が及ばない事件を解決するために道真のもとにやってくる、本作の業平の姿を彷彿とさせるものがありますね。

 

③藤原高子

男が女を背負い、暗い夜道を歩いていた。家の外に出たことがない女は男に尋ねる。

「あの光っているものは何ですか」。男は答える。「露でございます」。

たどりついたあばら家の中に女を隠し、男は戸口で女を守っていた。

しかし家の中から女の悲鳴が聞こえる。見れば女の姿は忽然と消えてしまっていた。

鬼に食われてしまったのだ……。男は涙を流して悲しんだ。

聞いたことがある方もいらっしゃるでしょうか。伊勢物語の「芥川」というエピソードです。

先程、伊勢物語の「男」が業平であるということはご紹介しました。

つまりここに登場する男とは業平のこと。それではこの「女」とは?

彼女こそが藤原高子(ふじわら の たかいこ)

今作では「たかこ」という名で呼ばれますが、「たかいこ」と呼ばれる場合もあります。

業平のかつての恋の相手とされている女性。藤原家の娘です。

美しい女性ですが、豪胆な面も持ち合わせます。

また、自分の頼みを聞かせるために道真を唐の珍品で釣ろうとするなど、おちゃめな一面も持ち合わせていますね。

彼女は、藤原家がさらなる力を持つため、天皇に嫁ぐことになります。

それでも、やはり業平のことを忘れられずにいる様子

それでもしっかり覚悟を決め、自分の運命を受け入れる姿が描かれます。

実際の高子も、25歳で入内(天皇と結婚)をし、のちに天皇となる男児を出産しました。

ちなみに、冒頭で紹介した「芥川」の場面には続きがあります。

業平と高子が駆け落ちしたことを知った高子の兄二人が、彼女を連れ帰ってしまったのです。

鬼に食われたのではありませんでした。これもやはり、「人間のしわざ」なのです。

 

「応天の門」の平安時代の貴族文化とは?

平安貴族の生活や考え方は、現代に暮らす私たちとは全く違います。

彼らはどんな生活を送っていたのでしょうか。一部ですが、ご紹介いたします。

 

平安時代の貴族の日常

平安貴族たちによって非常に大切だったのが、「占い」。

「陰陽寮(おんみょうりょう)」という、天文や占いを専門にする機関が公的に置かれていました。

暦を確認し、今日の運勢が悪いと出たら、予定をすべてキャンセルし家から出ないこともあったのです。

現代でも占いを気にする人たちはいますが、平安時代は家から出ないというほどの徹底ぶり

鬼や悪霊の存在が今よりも強く信じられており、また陰謀や策略が渦巻く時代だったので、警戒してしまうのもわかる気がします。

 

平安時代の貴族の恋愛

恋愛に関しては、現代とは大きく異なる形で進められていくことがほとんどでした。

まず、高貴な身分の女性などはほとんど外に出ることがありませんでしたね。

男性は、まずは気になる女性の噂をたよりに情報を集め、それからアプローチを始めます。

和歌を送り、それに好意的な返歌が来れば、チャンスですね。

そのために恋愛には和歌がとても大切であることがわかります。

また、重視されたのは「家柄」

在原業平もそうですが、天皇家の血が入っている男性はかなりモテました。

結婚に身分や立場は関係ないという考え方を持つ現代とは、全く異なる考え方ですね。

 

【まとめ】漫画「応天の門」は平安文化のテキスト!

「応天の門」で描かれている平安時代は、決してきらびやかで美しい世界ではありません。

藤原家をめぐるドロドロとした駆け引き、華やかな暮らしの裏で苦しむ民衆の姿、そして望まぬ結婚を強いられる女性たち……。

様々な形で引き起こされた事件を解決する道真と業平ですが、その全ての事件は人間が引き起こしているものです。

人の心こそが「鬼」である。そう思わざるを得ません。

女流文学や貴族文化に代表される平安時代の姿はほんの一面であり、いわば「光」です。しかしその裏側には必ず影があるもの。

その影の姿を知ってこそ、この時代の真の姿を知ることができるのです。

道真や業平たちの目を通して、平安時代の影の世界を、ぜひ覗いてみてください。